技術コラム

2026.08.28

工場の猛暑対策、業務用エアコン設置のポイントと導入事例【選定・気流設計・法対応】

工場の猛暑対策、業務用エアコン設置のポイントと導入事例【選定・気流設計・法対応】

記録的な猛暑が当たり前になる中、「既存の冷房では広い工場が冷えない」「屋根付近に熱がこもり、午後になると作業に集中できない」といったご相談が保全・設備ご担当者から年々増えています。熱中症による労働災害や生産性の低下は経営に直結する課題です。さらに2025年6月からは職場の熱中症対策が法的に義務化され、作業環境の管理は「やっておくと良いこと」から「事業者の義務」へと変わりました。本記事では、工場に業務用エアコンを設置する際に押さえるべき選定・設計・コストのポイントを、実際の導入事例を交えて実務目線で解説します。

酷暑環境を生む3つの要因

オフィス用の空調がそのまま工場で通用しないのは、工場という空間が持つ固有の条件によります。効かない原因を切り分けないまま機器だけを増設しても、電気代がかさむばかりです。まずは自社の現場がどのタイプに当てはまるかを見極めることが、設置計画の出発点になります。

① 空間容積の大きさに対する冷却能力の不足

工場は天井が高く床面積も広いため空調が相手にする空間容積(㎥)が非常に大きくなります。カタログの畳数目安は天井高2.5〜2.7m程度を前提としているため、天井高5〜8mの工場に当てはめると能力が大幅に不足します。「畳数」ではなく容積と発熱量から必要能力を積み上げる考え方が欠かせません。

② 屋根・天井付近への熱の滞留(温度成層)

暖まった空気は上昇し、屋根・天井付近に高温の層をつくります。これを温度成層と呼びます。金属屋根の工場では夏場に天井付近が40℃を超えることもあります。作業者がいるのは床から2mほどの高さですが上部の熱だまりが輻射熱として下りてきます。そのため床面を冷やしても体感温度が下がりにくいのです。天井付近にたまった熱をどう処理するかが工場空調の要点になります。

③ 生産設備からの内部発熱と、換気とのバランス

加工機やコンプレッサー、乾燥炉、溶接・切削工程など、工場内には発熱源が数多くあります。外気の暑さだけでなく、この内部発熱が室温を押し上げます。さらに局所排気や換気扇で空気を出し入れしている現場では、冷やした空気が排気されてしまう「空調と換気のせめぎ合い」が起こります。冷房計画は換気計画や、外気を遮断するシートシャッター等とセットで考えることで、はじめて効果が安定します。

業務用エアコン設置の4つのポイント

①熱負荷計算にもとづく能力(馬力)の選定

必要な冷房能力は外気からの侵入熱・日射・人体発熱・照明、そして生産設備の発熱を積み上げた「熱負荷計算」で決まります。ここを省略して「とりあえず大きめの馬力を」と選ぶと、過大なら初期費用と電気代の無駄、過小なら能力不足を招きます。広範囲を安定して冷やす大型・高出力機は選択肢の中核になりますが、その根拠はあくまで熱負荷にあります。

②気流設計と機種・配置の最適化

同じ能力の機器でも、どこに置き、どう風を送るかで体感は大きく変わります。吹き出した冷気がすぐ吸込口へ戻る「ショートサーキット」や、天井の熱だまりに阻まれて床まで冷気が届かない状態では、せっかくの能力を活かせません。天吊形・床置形・ダクト形といった機種の使い分け、作業者のいる高さ(居住域)を狙った気流の設計、屋根付近の熱を意識した配置計画が、冷却効果を最大化します。

③冷媒配管・ドレン・電源など「見えないインフラ」の設計

業務用エアコンは本体だけでは動きません。冷媒配管の長さや室内外機の高低差には機種ごとの制約があり、これを超えると能力低下や故障の原因になります。結露水を排出するドレン配管の勾配、三相200Vの電源容量やキュービクルの空き容量の確認も欠かせません。天井裏に隠れる配管は後から手を入れにくいため、機器更新のタイミングでまとめて設計・施工することが、将来のトラブルとコストを抑えます。天井空間を活かした配管の引き回しは床面の安全性向上にもつながります。

④初期費用ではなくランニングコスト・省エネで判断する

大型の高出力機は初期費用こそかかりますが、稼働時間の長い工場では電気代の比重が大きく、省エネ性能(APF・COP)の差が数年で初期費用の差を上回ることもあります。加えて、能力に余裕のある機器は真夏でも過負荷になりにくく、故障や停止のリスクを下げます。初期費用の一点だけで比較せず、耐用年数を通じた総コスト(TCO)で判断することが重要です。冷却塔などの周辺設備も含めて更新時期を見極めると、投資判断はより確かになります。

見落とせない「法対応」──2025年6月から熱中症対策は事業者の義務に

2025年6月1日に改正労働安全衛生規則が施行され、一定条件下の作業では熱中症対策が事業者の義務となりました。対象となるのはWBGT(暑さ指数)28℃以上または気温31℃以上の環境で、連続1時間以上または1日4時間以上が見込まれる作業です。事業者には次の3点が求められます。

・熱中症の自覚症状がある人を早期に把握・報告する体制の整備を整備すること

・作業の中止・身体の冷却・医療機関への搬送などの手順の作成すること

・これらの体制・手順を、関係する作業者へ事前に周知すること

義務化の対象は、上記の「体制整備・手順作成・周知」です。業務用エアコンの設置そのものが法で義務づけられているわけではありませんが、WBGTを根本から下げる作業環境管理として、義務の実効性を支える有効な手段になります。空調を適切に設計・導入しておくことは、労働災害の防止と法令順守の両面で、費用対効果の高い投資の一つといえます。なお、義務の詳細や自社作業が対象に当たるかは、厚生労働省の資料や所轄の労働基準監督署でご確認ください。

【導入事例】金属加工業|ダイキン製 大型業務用エアコンの新設

実際の改善例をご紹介します(詳細は施工事例ページ「大型業務用エアコン導入」をご覧ください)。

お客様業界 金属加工業
施工カテゴリー 空調機器・換気/エアコン
施工内容 空調機器 新設(ダイキン製 高出力大型エアコン)
工期 約1ヶ月
初期費用 1台あたり100万円ほど

この現場では記録的な猛暑で工場内の温度が上昇し、現場から「今の環境では体力が持たない」「仕事に集中できない」という声が上がっていました。既存の冷房では広い空間を冷やしきれず、熱がこもる状態が続いていました。熱中症リスクに加え、集中力の低下が招く労働災害や生産効率の低下が経営課題となっていました。
そこで広範囲を安定して冷やせる高出力モデルを導入いたしました。性能と信頼性を最優先に選定し、屋根付近の熱だまりを考慮した配置・気流設計を計画しました。初期費用は1台あたり100万円ほどとなりましたが、これは「温度を下げるコスト」ではなく、過酷な環境でもパフォーマンスを維持できる労働インフラへの投資と位置づけたご提案です。
導入後は酷暑日でも作業者が安全かつ快適に業務にあたれる環境が整い、熱中症リスクの低減と現場の士気向上につながりました。設備導入を「投資」と捉えるワンストップ体制株式会社タナカ善は、工作機械・切削工具の商社として1950年の設立以来70年以上、京都・滋賀を中心とした関西エリアで製造業の現場を支えてきました。その現場知識を土台に工場設備の工事事業では小規模な修繕から大型設備の据付までを手がけ、これまで800社を超える工場に対応しています。機器の選定・設置から安全対策、省エネ設備、定期点検・アフターメンテナンスまでをワンストップで対応できるのが特長です。
業務用エアコンについても、熱負荷計算にもとづく選定、気流を考えた配置、冷媒配管や電源といった付帯インフラの設計、正規販売店としての確実な施工までを一貫して提供します。設備導入を単なるコストではなく従業員の定着・安全・生産性を支える投資として捉え、その効果を最大化する施工を行います。空調まわりの他の実績は、空調機器・換気の施工事例機器・装置の据付サービスのページでもご確認いただけます。ご相談・お見積りはお問い合わせフォームから、詳しい施工内容は資料ダウンロードからご確認いただけます。

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